Last Update:02/05/17
  2001.03.22
  ビジネスプラン・学生社長

  2001年3月22日 高知新聞(朝刊)
  2001年3月22日 高知新聞(朝刊)  
開学四年目を迎えた高知工科大の大きな動きや課題を追ってきた。最後に、これまで全体の動きに押されて、あまり姿が見えてこなかった大学の主役、学生の目指しているものを紹介する。
 
■ビジネスプラン  
二十一日に卒業した電子・光システム工学科の横谷公仁さん(二二)は、二月に大阪市で開かれたビジネスプランコンテストで、上位のプレゼンテーション賞を獲得した。
 
横谷さんのビジネスプランは、仕事が見つかりにくい年配者や障害者が、企業側に就労条件を提示して、仕事に就く機会を得る情報サイトをインターネット上に開設するものである。
 
「働きたくても年齢などがネックになって働けない人が多くいます」その人たちが例えば賃金が他の人より低くても働きたいとするなら、そういう交渉をする場をインターネット上に設けて、就労の機会を増やそうというのがねらいです」
 
横谷さんは、コンテストで発表した資料を見せながら、丁寧に説明した。コンテストではプレゼンテーション用のパソコンソフトを有効に活用して、分かりやすく、かつユーモアたっぷりに発表したことが評価されたという。
 
プランそのものは実現に課題も多いが、仮に優れたプランを持っていても、売り込みが下手で評価されなければ意味がない。その意味で、今回の受賞は横谷さんにとって大きな自信になった。四月から高知市の情報通信系企業に就職するが、「プランをいろいろ改善して、いつか実現させたい」と意気込む。
 
■学生社長
 
「大人になると夢を捨てる。だから日本人は元気がないといわれる」と熱く語るのは高知工科大の社会システム工学科の三年生、鈴木寛子さん(二一)である。
 
間もなく新しいスタイルのコンビニエンスストアを香美郡土佐山田町の工科大近くにオープンさせる。そのために、二月に会社を設立し、社長に就任した。工科大の学部生で唯一の学生社長である。
 
店では「おふくろの味」の軽食や、地域の物産品も販売。二階には各種イベントが開ける大部屋がある。「学生や大学の教職員、地域の人と観光客も交流できる空間を目指したい」と鈴木さん。
 
いまやコンビニは流通業界でもIT(情報技術)を駆使した経営やサービスを展開している。既存の大手コンビニは、コンピューターネットワークを利用した商品発注やチケット販売を展開している。
 
鈴木さんも将来的には店でITを生かしたビジネスを考えている。だが、その前にまず、学生の健康生活を応援し、起業や研究、趣味をサポートする事業を展開しにいという。単なる商品売買の場でなく、若者の夢の実現を支える場を目指している。
 
店のイメージソングも完成した。制作は同じ工科大三年生ら四人でつくるロックバンド「NOBODY−176」。高知市内のライブハウスでイベントを開催すれば、三百人以上を集客できる人気バンドである。近く自主制作でアルバムのCDも発売する。
 
彼らもまた夢を追い続けていた。メンバーの一人、知能機械システム工学科の刈谷篤史さん(二一)は「プロを目指したい。大変なことですが、とにかく、やれるところまで挑戦してみたい」と話す。
 
自らの思いを追求する−。学生たちは確実に何かを創(つく)り出そうとしていた。これが工科大のもうひとつの姿であり、大学の末来を象徴する現象であると願いたい。
 
工科大の教職員や学生の本当の意味の挑戦がこれから始まろうとしている。
 
(社会部大学取材班・高橋誠)

 

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