Last Update:02/09/28

「生きるまでいきたらば、死ぬるでもあらうかとおもふ」

「無苦庵記」前田慶次郎 より


抑(そもそも)此(この)無苦庵(慶次郎のこと)は、孝を勤むべき親もなければ、憐れむべき子もなし。

こころは墨に染ねども、髪結ぶがむづかしさに、つむりを剃り、手のつかひ不奉公もせず、足の駕篭かき小揚やとはず。

七年の病なければ三年の蓬(もぐさ)も用ひず。

雲無心にしてをまた岫(くき)を出るもまたをかし。

詩歌に心なければ、月花も苦にならず。

寝たき時は昼も寝、起きたき時は夜も起る。

九品蓮台に至らんと思ふ欲心なければ、八萬地獄に落つべき罪もなし。

生きるまでいきたらば、死ぬるでもあらうかとおもふ。


一夢庵風流記 「一夢庵風流記」より
隆慶一郎 著
定価 667円

 

依光感想
 
戦国時代の武将、前田慶次郎利益(とします)の小説、「一夢庵風流記」で紹介されていた文章で、とても好きなので載せてみました。

江戸時代の官僚的な武士ではなく、戦国時代を生きぬいた「花」としての武士。

さっぱりと見える一方で、何か切ないという日本的美のあり方。

人は一代、名は末代

そういう誉れ(ほまれ)を求める生き方にたまらない憧れを持つのです。

PS 漫画の「花の慶次 雲のかなたに」も面白い♪

 
 
 
もどる