Last Update:00/11/05
 
 
強情で豪快な黒潮気質

高知県人

「県民性の謎」朝日ソノラマより


総論

何を見ても、誰から話を聞いても、高知県といえば坂本竜馬吉田茂である。百円札があったころは、吉田茂よりも板垣退助のイメージが強かったような気がするが、小粒で任期の短い首相が続くいま、あの豪快なワンマン宰相を懐かしむ人が多いのだろうか。ワンマンといえば、高知県人はそれこそ豪快なワンマン気質である。なんでも自分で決める他人の忠告には従わないし、意見でもしようものなら、かえって意固地になる。負けず嫌いで、少々ひねくれている。計算高く小ずるい人問が嫌い。細かいことに気を使うのも好きではない。ウジウジするのが大嫌いだから、とにかく「やるといったらやる」のである。行動的、かつ大雑把に事をはじめる面では愛媛県人と似ているところもあるが、「伊予の駆け出し」的な軽率さは、高知県人にはない。一応の目安だけはっけてから、動き出すのだ。ただ、何をするにしてもデリカシーに欠けるというか、細かな気遣いがないため、周囲から見ると「わがまま」に見える。大事の前の小事というように「何かを犠牲にしよう」とするわけでもなく、「細かなことなど、どうでもいい」のが高知県人なのだ。これを無神経と見るか、豪快と見るかは意見が分かれるところだが、その結果大きな仕事を成し得ることも確かである。

高知県人は日本一の酒好き

高知県人は酒好きで知られる。酒類の一人当たりの消費量は、東京、大阪に次いで三番目。東京人や大阪人はビールを中心に飲むということを考えると、清酒に限れば高知県人日本一消費しているといってもいいだろう。では、なぜそんなに酒を飲むのだろうか。その理由は、当然のことながら酒どころだからである。新潟県や秋田県は酒どころであると同時に、清酒消費県でもあるが、高知県もその例外ではないのだ。しかも、土佐鶴にしても司牡丹にしても、昔から辛口で飲みやすい。ベトつくような甘口なら、途中で飽きがくるが、辛口だからグイッと飲めてしまうのである。このように大酒を飲むことが、ごく当たり前の土地柄でかるから「何かあったら酒の席」となる。たとえ下戸でも、飲まなければつき合いはままならない。テレビのドキュメンタリー番組で、レポーターが少数民族の住む集落へ行く場面を目にしたことがあると思う。そのなかでよくあるのが「現地の人が歓迎のために出してくれた料理だから食べないと失礼なんですよね」といって、泣く泣くまずそうなものを食べるシーンだ。まったく酒の飲めない人が、高知県人に接待された場合は、まさにこの状態になる。相手は歓迎してくれているのだが、当人は苦痛でしかたがない。が、いごっそうの高知県人は、何くわぬ顔で自分たちのルールを押し通すのである。

やるときしかやらない土佐男と、いつも元気な土佐女

総務庁の「社会生活基本調査報告書」の男性の一日の生活時間配分を見ると、高知県の男性の生活ぶりがよく分かる。睡眠時間全国で4番目に多く、テレビや雑誌などのメディアに費やす時間全国一趣味・娯楽に費やす時間全国一である。一方、仕事の時間となると、45番目という結果。女性が「全国平均よりもかなり上回る時間を仕事に費やしている」のに対して、男性がいかに遊び好きなのかがよく分かる。

普段は遊びほうけていても、大仕事ができる男」、「ケンカっ早く強情だが、やるときはやる男性」たちは、男勝りに大酒を飲み力強く生きる高知の女性に支えられているのだ。健気に陰で支えているというイメージはないにしても、我慢強くバイタリティーのある彼女たちこそ、土佐の男に「いい仕事」をさせているのではないたろうか。


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資料として

「県民性の謎」
千石 涼太郎 著
朝日ソノラマ
定価 1400円

 
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